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おたく的なことをちまちまと綴るブログです。
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「もう……行くのかい」
「はい。お世話になりました」

茶菓子を勧める私ににこりと笑い掛けて、彼は席を立った。
それを留めることなど今の私に出来る筈もなく、ただ憮然とした表情で見送ることしか出来ない。
私とて、此れが薄汚い賄賂のようなものだと解っていた。
解って遣っていたのだ。彼が其れに気付かぬ筈もない。
玄関の扉に手を掛けた彼は一度だけ振り返って、何かを期待するような哀しげな瞳で私を見た。

「――何か、」

忘れものでも、と乾いた声で問い掛けるとゆるゆると頭を振る。
目深に被った似合いのハンチング帽の縁を撫ぞる指先が微かに震えていた。

「結局僕はあなたに必要ない存在だったのでしょうか」

切羽詰まったような問い掛けに、そうではないと反射的に答える。

「そんなことは無いよ、断じてそんなことは無い。私にはきみがどうしても必要だった、けれども私たちの道は何時からか隔てられて仕舞ったのだ。其れは私の所為でもなければきみの所為でもない。運命の悪戯と云うやつだ」
「あなたは」

ガチャリ、ノブを回して玄関の戸を押し開ける。
さあ、と清廉に差し込んだ淡い光のカスケエドに、彼の細っこい影がゆらゆらと不安気に揺れた。

「僕を捨てました」

玄関から流れ込んでいた光の粒子がぴたりと動きを止めた。
彼の影が真っ直ぐに床を貼って伸び、私の目の前で焦げ付く。
それきり彼は何も云わずに、くるりと踵を返して部屋を出て行った。

開け放たれたままの扉からは再びゆらゆらと光が流れ込んで来る。
ただ、私を責めるように焼き付いた彼の影は、そのまま幾ら経っても揺らぐことすらしない。

「――仕方ないだろう」

誰に聞かせるでもなく、乱暴に髪を掻き回しながら呟く。

「仕方なかったんだよ」

遠ざかって行く彼の姿とは反対に、彼の影が床に焦げ付いて離れない。
私の履歴に付いた傷。
一生消えない無能の烙印。


「――取れるものなら取りたかったさ……」



さよなら、単位。




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昔の日記を読み返していたら、私にしては気の利いた短文が出て来たので載せてみました。笑














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……なんかアルバイト先で不手際があったらしく、もしかしたら給料を万単位で減らされるかも知れないと言うのでかなりげんなり来ています。状況的に私が盗んだとしか考えられない状況なようなのですが、不肖ながら他人様の金に無断で手を出したことは生れてこの方ないのですこぶる心外です。憤慨しています。って言うかちゃんと調べたのかよって言う。長く勤めて来たしそれなりに信頼してもらってたと思っていたので尚更気分悪いです。疑惑が晴れないようなら矜持に掛けて今月分の給料とかもう要らんからすぐにでも辞める心づもりなので今から新しいバイト応募しようかなと思いました。くそっこの忙しい上に財布が逼迫しているときに……精神的にフルボッコですOTL
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