

メナスさんとスーパーメロウタイム
このブログには何かが足りないと思ったらこれだった
m9(^Д^)
俺……10kg痩せたら若王子先生に告白するんだ…… m9(^Д^)
このブログには何かが足りないと思ったらこれだった
m9(^Д^)
俺……10kg痩せたら若王子先生に告白するんだ…… m9(^Д^)
おたく的なことをちまちまと綴るブログです。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「あれゃ、二目とは見られないね。そんくらいとびきりだったし、そんくらいとくべつだったよ」
彼は先日墜とされた第弐特攻隊の隊員について話していたのだが、何か物想うところがあったのかふと言葉を切った。
「そう云えば彼にね」
飛行服の懐を探ると、愛おしそうに土汚れの付いたボロッ切れを取り出した。
「彼が此れ、呉れたんだよ。“貴様が征く時はおれが誘導して敵に突ツ込ませてやるからな”って。
此れはそれの血判だよ。だから僕は彼の家族に手紙を書かなくてゃならない」
然し此処にはヰンキもペンも無かった。仕方無いから彼は夜な夜な己の指を噛み千切るのだろう。
幽けし黒金の匂いの漂う宿舎でさいごの夜は淀んでゆく。
「ねえ、信じられるかい。操縦席はベニヤの板なんだってさ。でねえ、くろぐろ光るごひゃくきろばくだんがねえ、その周りを取り囲んどるんだって。彼とモウ一人ね、二つ一緒に敵に突ッ込んだんだけど、一つは敵に当たらないで海に墜ちたんだって。それでもう木端微塵だよ、信じられるかい。どっちが敵に当たったか解らんのだって。だから二人ともお偉いさまが表彰して呉れるのだと」
夕日がすすり泣いた。
わたしは彼に掛ける言葉など持ち合わせていなかったし、彼も亦わたしに掛けて欲しい言葉など無かったろう。
明日には彼もベニヤの住人だった。
「義は山嶽よりも重し、死は鴻毛よりも軽し」
わたしにはなんも云われなかった、そう云う風にわたしたちが彼を仕向けたのだ。
彼はなんだか奇妙に笑って、仰々しく詠った。
「征く先を 例ひ閻魔が分つとも
きみが標は 我が手繰らむ」
わたしはただなんともなしに、彼の大事なひとは海に墜ちた方のでは無いか知らんと思い始めた。
きっと彼もそう思っているのだろう。
でなければあんなに悲愴な顔付きで今にもくずれそうな練習機など見上げない。
「それは違うよ、僕はね、椅子。僕は合法的な自殺をしに行ったんだよ。羨ましいだろう。それはあの時逃げたきみの罪だ業だ罰だ。ただ埃っぽいだけの世界で老けてゆくのは辛いかい。増え続けるがらくたに、僕の形見も彼の誇りもきみの感傷も、場所を追われたかい」
彼は先日墜とされた第弐特攻隊の隊員について話していたのだが、何か物想うところがあったのかふと言葉を切った。
「そう云えば彼にね」
飛行服の懐を探ると、愛おしそうに土汚れの付いたボロッ切れを取り出した。
「彼が此れ、呉れたんだよ。“貴様が征く時はおれが誘導して敵に突ツ込ませてやるからな”って。
此れはそれの血判だよ。だから僕は彼の家族に手紙を書かなくてゃならない」
然し此処にはヰンキもペンも無かった。仕方無いから彼は夜な夜な己の指を噛み千切るのだろう。
幽けし黒金の匂いの漂う宿舎でさいごの夜は淀んでゆく。
「ねえ、信じられるかい。操縦席はベニヤの板なんだってさ。でねえ、くろぐろ光るごひゃくきろばくだんがねえ、その周りを取り囲んどるんだって。彼とモウ一人ね、二つ一緒に敵に突ッ込んだんだけど、一つは敵に当たらないで海に墜ちたんだって。それでもう木端微塵だよ、信じられるかい。どっちが敵に当たったか解らんのだって。だから二人ともお偉いさまが表彰して呉れるのだと」
夕日がすすり泣いた。
わたしは彼に掛ける言葉など持ち合わせていなかったし、彼も亦わたしに掛けて欲しい言葉など無かったろう。
明日には彼もベニヤの住人だった。
「義は山嶽よりも重し、死は鴻毛よりも軽し」
わたしにはなんも云われなかった、そう云う風にわたしたちが彼を仕向けたのだ。
彼はなんだか奇妙に笑って、仰々しく詠った。
「征く先を 例ひ閻魔が分つとも
きみが標は 我が手繰らむ」
わたしはただなんともなしに、彼の大事なひとは海に墜ちた方のでは無いか知らんと思い始めた。
きっと彼もそう思っているのだろう。
でなければあんなに悲愴な顔付きで今にもくずれそうな練習機など見上げない。
「それは違うよ、僕はね、椅子。僕は合法的な自殺をしに行ったんだよ。羨ましいだろう。それはあの時逃げたきみの罪だ業だ罰だ。ただ埃っぽいだけの世界で老けてゆくのは辛いかい。増え続けるがらくたに、僕の形見も彼の誇りもきみの感傷も、場所を追われたかい」
PR